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雨の季節には、空のふちが絶えず煙るように雲っていて、 緑なす山々の向こう側を望むことはできない。 ダラムサラに入ってから二週間ほどずっと、 「あの昏い緑の山の連なりが、ここから見えるヒマラヤ山脈の末端」と思っていた。 ある日、豪雨のすき間に霧が晴れ渡った瞬間、 いつも見えていた緑の山々のさらに向こう側に、真白い峰が姿をあらわした。 小さく、けれども傲然と、晴れやかに。 あのあざらかな峰を、 はるかに高く、白く鮮烈な道すじを、ひとびとは越えてくるのか。 ある者は 着のみ着のままで、 ある者は 穴のあいた運動靴で。 ある者は 10代の若さで拷問に晒され、 ある者は 30年以上もの長きに耐えて。 ある者は 自らの手足を凍傷で真っ黒にして切断を余儀なくされ、 ある者は 自らの背中に幼い弟や妹の冷たくなった躯を背負って。 なんという運命。 なんという生。 * すでに秋! しかしなにゆえに永遠の太陽を惜しむのか。 私たちが聖なる光の発明につとめているのであるならば、 ……季節の移り変わりにしたがって死滅する人々からは遠く離れて。 : とはいえ、今は前夜だ。 流れこむ生気と本物の優しさは、ことごとく受け入れよう。 そして、暁が来たら、燃え上がる忍辱の衣を着て、 私たちは輝かしい都市に這入るだろう。 ――― A. R.
by epea_d
| 2008-09-14 22:52
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